モノクロ寫眞、アナログ寫眞に傾倒している者として御多分に洩れず自宅に暗室を構えております
この四方を黒いカーテンに囲まれた小さな世界が、私の世界の全てでございます。
1日の大半をこの空間で過ごすものですから暗黒の世界で自分自身と向き合うしか方法を知らぬものでございます。
暗室というものは、一人で作り上げるものですから愛着はそれはそれは深いものです。
表題にある通り、いわば”私の城”と呼んでも差し支えございません。
もし、フィルム写真をご自身でしてみようとされた際に参考まででございますが、わたくしが暗室を作るまでにかかった材料や費用なども記しておきましょう。
まず、暗室を作るのはなかなか骨の折れる作業でございます。必要なものはたくさんあり、なおかつフィルム写真全盛の時代ではないため道具を見つけるのも大変でございまして、その分できたときには達成感とこれから自分の作品を自分の手だけで作ることができることへの嬉しさで打ち震えることでございましょう。
さて、わたくしが暗室を作るために最初に始めたことは、場所の確保でございます。
これが何よりも大切なことでございまして、わたくしの愛読書に「dark room cookbook」なるものがございます。著者はスティーブ・アンチェル。
現像液の処方の必要薬品などを網羅した素晴らしい著書でもあり、暗室に必要なものも記述されております。如何せん翻訳されてはおらず、読み進めるのには苦労しますが、中学英語もおぼつかないわたくしにでも読み進められましたので、気力と根性があれば読めるものであるとは思われます
作業場所は基本的に2つに分割されます。ウェットルームとドライルーム。日本語にすればなんと翻訳されるべきでしょうか。
ウェットルームですべきことは現像液、停止液、定着液などの液剤を使っての作業場ありまして、ドライルームはフィルムから印画紙へと引き伸ばしをしたり主にウェットルームに至る起点を行う場所になります。
それぞれの場所に必要なものなどは、項を変えてまた別に述べていこうと思っております。
そして、この場所をダークカーテンで覆う必要がございます。つまりは光を完全に遮断せねばなりません。
市販にダークルーム(暗室)組み立てキットなるものが売ってはございますが、それはそれは高価なものでございまして、ただでさえ機材にお金のかかる場所になりますから、なるべく安く抑えるに越したことはございません。
おおよそ相場は10万から15万円ほどでございましょうが(そんなにするのかと思われましょうが、わたくし自身も驚きました)基本的なことを考えればそこまでの投資をせずとも暗室は作れます。
わたくし自身、機材などを抜けば暗室自体の作成にかかった金額は2万円ほどでございます(ただ、個々によっては設置場所の条件や環境が異なると思いますので一概には安くなるとは言い難いのですが)
骨組みとなるパイプはインターネットにて1万円ほどで購入し、ダークカーテンはネットオークションにて3枚組のものを8千円ほどで購入いたしました。
あとは壁などを利用して、天井と四方をダークカーテンにて塞ぎ、完成でございます。
暗室を作る際に一番手こずるのは遮光というものがなかなか難しいということでしょうか。
光というものがいかに溢れているのかということに気が付かされます。
あっちを塞げはこっちに光が漏れ、こっちを塞げば別のところからと。光と追いかけっこすることになると思いますので、暗室を作る際は1日で仕上げようなどとは思わないことがよかろうと存じます。
暗室の区画ができましたら、あとは機材などを置いていくという流れでしょうが、機材は基本的には暗室で覆う前に置いておくのがセオリーであります。
引き伸ばし機などは大きいものでもありますので、ドライルームで作業するものは事前に設置しておいた方がよろしかろうと思います。
薬品類も少しづつ購入していれば、このようになってきますので、あらかじめ棚は確保しておいた方がよく、手焼きプリント用の印画紙を乾かす場所も必要になります。
そんなこんな考えていると、どんどん暗室は出来上がります。
拡張していく感じはまさに自分の城となりましょう。
そして過去に撮ったフィルムを現像し、手焼きをするという未来にはなかった自分の作品を作る。
それは光によってなされ、自分自身の時間軸を操作することになります。
まさしくそこはタイムマシンの中のことなのではないでしょうか。
暗室の中での作業は時間を忘れて、自分の過去と未来を行きつしながら、楽しむことができる不思議な空間であります。
そこは誰にも邪魔されず、干渉もされず、ただひたすら自分自身と対話を行える至福の空間であります。