やってまいりましたうらばなし
今回ご紹介に預かりますのは「浮雲」さんです。
なぜこの題名にしたのかと申しますと、「浮雲」って言葉に感じる印象とありますでしょうか?
雲というのは密集していたり、固まっていたり、いろんな形をしていて表現する言葉もたくさんあります。
なのに「浮雲」ってなんだかちょっとひとりぼっちな感じがあり、「浮雲」って漢字をずっと見ているとゲシュタルト崩壊しますよね笑
手焼きの際に上部のトーンをかなり焼き込んで製作しているので、上のネガのスキャンだと締まりがない写真ですが、フィルム写真のよさの一つに手焼きでトーンを調整してよりよくできるというメリットがあります。
フィルム写真はあくまでも引き伸ばし作業で手焼きをするまでを想定して撮るということを教えられたのでそうしています。
さて、この写真なんですが、海で撮影をするのが大好きな私ですが、もちろん海です(笑)
個展に来られた方はみなさんこの写真を朝焼けと思った方が多かったようです。
実は夕暮れです(笑)
太陽が山の向こうに消えてしまって、さて帰ろうとして浜辺をうんしょうんしょと歩いていると、やけにいつもより、空が明るいなと思って振り返ると赤紫色になっていまして、わあ綺麗だなーと思って、上には例の「浮雲」がぼうっと漂い、一幅の絵に見えました。
ハッセルを見るとフィルムホルダーの目盛りに一枚残っていたので、撮った次第です。
日が下がるその時に取り残されていた「浮雲」
仲間の雲がいるところに行くこともできず、ただ一人そこに揺蕩うしかありません。
しかしながらその一人で夜の帷が降りる空を慌てるでもなく、浮いている様は悠然としていながら、我が道を行く強さを感じました。
そんな「浮雲」に自分の理想を重ねて、なおかつより一層トーンを焼き込むことで消えゆく闇の中で浮かぶその姿を表現したいと思った一枚です。
今日は全国的に天気が荒れ模様のようですので、しかも寒い!!から皆様も体調を崩されぬようお気をつけてお過ごしください。
浮雲のようにあわてずゆったりとした気持ちで。