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ロジナールの誘惑

ADOX(アドックス)というメーカーがございます。

フィルム写真をされている方でご存じない方はいらっしゃらないかと思いますが、フィルム写真を初めて間もない方はいずれ耳にし、目にすることになるであろうと思われる、欠くことの出来ないメーカーでございます。

そして、ADOXがADOXである所以は、ロジナールという現像液によってなされている部分が大きいと存じます。

ロジナールに関しては、諸氏が記事にされることも多くその概要についてはもう語る必要のないものでございますのでここでは割愛させていただきます。

わたくしがここで書きたいのは何故ロジナールがここまで愛され、そして憧憬を得る現像液になりえたのかをこれからフィルム写真をされる方に向けて興味の一助となればと思った次第でございます。

ロジナールを語る前に、フィルムをされる方自家現像をこれからされようとしている方に向けてもう一つの現像液についても説明しなければならないと思っております。

kodak(コダック)というメーカーに、D−76という現像液がございます。以前もしくは自家調合にてD-系の現像液はたくさんございまして、標準現像液と言われる地位を確立したのがD-76と呼ばれる現像液になります。(そもそも標準現像液という名称については明らかな根拠はありません。汎用性の高さからそのような呼称を用いれられたのか?)

その他のD-系の現像液のことについてはdarkroomcookbookに処方が記載されておりますので、自家調合をされてみたい方は参考になさってください。日本では手に入りにくい薬剤も多いので心折れると思いますが。。。

D-76がロジナールよりも人気といいますか、使われていた時代は戦争が当たり前のように起きていた時代のためでもありました。戦地の報道のために多くの写真家、報道カメラマンが兵士とともに従軍していた時、多くのフィルムに使用できる汎用性の高さ、希釈や攪拌によってあまり左右されにくい仕上がりなど、要はかなり便利な現像液ということで重宝されました。

詳しく書くと、フィルム写真をされようと決意された方がアレルギーを起こす要因になりかねないので、要は安価で安定して現像でき、安い!早い!とりあえず写っている!が最低限の時代にあって、要求に応えることができた時代の寵児であったと感じていただければ大丈夫かと思われます。

しかし、今現在においてはその存在は意味をなさなくなってきております。

かくいうわたくしもD-76幻想に取り憑かれていた時期もございます。フィルム写真を初めて自分で現像することになれば、もちろんD-76を使ってみることは大切だと思います。

なぜなれば、写真の主題をどのように持ち合わせて、作品を作るかはそのかたの感性に依存されるものであると思っているからでございます。

よく言われるD-76はのっぺりとして平面的な表現になると言われていますが、それが好みである方ももちろんいらっしゃるわけでありまして、自家現像に興味が湧いて、いくつもの現像液を使っていくうちに、もしかするとD-76のクラシックな趣が好きだという方も出てくると思います。

クラシックというとまさにロジナールこそクラシックでもあるかと思いますが、1891年に生を受けて今尚フィルム写真家たちに愛される現像液であります。

ロジナールにおいては、ファンがこれまた多く、ロジナールのみしか使わないという方もいらっしゃいました。

フィルム写真を始めた頃は、まだまだロジナールが手に入り易い環境にもあったせいかそれほどには魅力を感じなかったものの、少しづつ写真の作り方にこだわり始める頃になると、ロジナールは次第に誘惑するようになってきました。

その魅了的な赤い色彩は、まさに奔放な自由なそれでいて繊細な女性を思わせるものでございました。

奔放な自由なというのは、希釈率、および攪拌の仕方によって仕上がりが変わるということであります。(厳密にはコントロールでもありますが、あくまでもわたくしはフィルム写真を始める方を増やしたいという思いからこのブログを作成していますので、詳細な説明はフィルム写真アレルギーを引き起こさないか心配でありますので、簡易的な説明に終始しておりますことを諸氏の方々には長い目で見ていただきたいのです)

1+49、1+24、1+99、など希釈率があります。驚くほどに薄いです。初めてロジナールで現像をする際はその使用する容量の少なさに驚くと思います。(500ml使用する場合50で割ると10の原液が必要など)

魅惑的な女性は、焦らすのが上手いと言い得るのはロジナールも同一でございましょう。

ロジナール現像液を使い切るのはなかなかに骨が折れます。

撹拌の仕方も、30/60/1、30/60/3、静止現像などもございます。ここがこの麗しのロジナールの繊細なところといえましょうか。(表記は30秒初期攪拌ののち60秒ごとに一回の撹拌など)

フィルム写真は基本的には現像液を何を使うかによって、全てが決まります。

フィルムじゃないのかと訝しむと思われますが、感度や特にトーンについては現像液によって決定されます。

写真を撮るときにはフィルム選びもさることながら、現像液は何を使うかをあらかじめ決めておかなくてはなりません

難しく感じることもあろうかと思いますが、何よりもそれが楽しいのです。

自分で薬品をコントロールして、フィルムを仕上げるというのは、何か職人のような感覚になりませんか?

アナログ写真はアナクロではないのです。写真の基本構造は既に100年前に確立していて、それを現代まで変換と応用を続けているに過ぎない技術なのであります。

だからこそ、アナログ写真は最新の写真技術と呼べるものだと感じてはおりますが、如何せんその古臭いのと面倒だというイメージがあまりにも先行し過ぎていて、その奥深さに至るまでに日々の煩わしさ、忙しさの合間にするには手間がかかりすぎるということがあることも否めません。

ロジナールを手にしたときに何か難しいなと思うことはなく、現像データなどはたくさんのサイトで記載されてもおりますので、まずはそれを参考になさって現像してみてください。

フィルムは現像するまでは目には見えず、見えない状態のものをコントロールすることのイマジネーションはとても楽しく、仕上がりが上手く行った時の喜びはこの上ないものです。

是非とも、ロジナールの誘惑に乗ってみていただきたいと思います。

無上の喜びあることは請け合いですので、今現在はコロナ禍の影響のため手に入りにくい状態が続いていますが、それまではD-76などを使用して現像に慣れておくのもいいかもしれません。

それ以外にも良質な現像液はございますので、自宅にいる時間が多いときこそフィルム写真で何気ない日常を、静物画的な写真でも良いと思いますので、たのしんでみられることを願っております

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