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スナップという魔物

暫くぶりのブログ更新でございます。

ここ最近は文章が全く浮かばずぼんやりとした日々が続いておりました。写真に関しても自分の撮る写真への疑義が募るばかりとなり良いネガを作り出せずにおりました。

そんな中、母親と出かけた先の本屋で偶然にソール・ライターの新しい写真集が出ているのを発見して、これは買わなければと思い購入した次第であります。

中身はというと言葉にせずとも完成された写真の数々。スナップという日常に隠れた魔物をこうも飼い慣らすソール・ライターの手腕に舌を巻くばかりでございました。

真似しようとしても決して真似できず、同じように写真を撮ろうとしても亜流な写真しか出来上がらないだろうと思わせてしまうほどの完璧さでございます。

往年の名作映画の一コマ一コマを切り取ったようでありながら、決してその写真の動きが止まらない。こんなセンスを年齢を重ねるたびにさらに昇華させるという驚異的な人物でございます。

スナップは魔物であります。これはわたくしの感覚でありますが、日常の中の非日常を切り取るという行為はいともすれば人が見向きもしないもの、見過ごしていくもの、気にも止めないものを掴む作業になります。

そこに隠れた噛み付いてきそうな瞬間を瞬時に見極めてシャッターを切る。この感覚は研ぎ澄まされた感性の持ち主にしかできないことでございます。

それを真似しようとするものは多くいますが、ほとんどの場合、非日常を切り取ろうとして日常に埋もれていく自分の感性を描き出すに過ぎません。

それはいわば周りに流されて生きていくことを受け入れて大人になっていく人生と同じであります。

ソール・ライターのスゴい点は子供の頃のような感性と視線で街を歩いていくのであります。

それを高齢になっても失わずに続けていたのです。

スナップに向き合う時必ず自分の人生がいつの間にか大人に流されいることを実感せざるを得ない感覚を味わうことになるのでございます。

その瞬間に絶望することもあるからこそスナップというものを撮るときは覚悟がいるのであります。

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