サイトアイコン サジキハラ テツの暗室

個展に向けて

個展は、作品を並べることが目的ではない。

自分が何を見つめ、何を問い続けてきたのかを、一つの空間として提示することだと思っている。

私が写真を通して追い続けているのは、「不在の中の存在」であり、「死」の気配である。

人が写っていなくても、その場所には確かに誰かがいた痕跡が残っている。

私が撮りたいのは、その痕跡が静かに語りかけてくる瞬間だ。

これから個展までの制作過程や考えたことを、このブログに記録していきたい。

完成した作品だけでは見えない、試行錯誤や迷いも含めて、一つの作品の軌跡として残していこうと思う。

この写真を撮ったとき、街の片隅にある階段で、一人の若者がうなだれていた。

行き交う人々は彼に目を向けることなく、ただ通り過ぎていく。

その姿は、まるで彼が最初から存在していないかのようだった。

彼は外国人にも見えた。そのためか、異邦人としての存在の希薄さをいっそう強く感じた。

都市の風景に溶け込みながら、誰の記憶にも留まらない。

幽霊のようでもあり、そこに置かれたオブジェのようでもある。

それでも、その場所には紛れもなく一つの命があり、一つの人生が静かに佇んでいた。

私はその光景を美しく整えることはしなかった。

むしろ、存在が闇へと溶け込んでいく感覚を残すために、露出を限界まで抑え、暗部が潰れる寸前でシャッターを切った。

それが、この場に漂っていた「見えない存在」を最も忠実に写し出せると感じたからである。

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